施主へメール
 正直言って、そこに掲載されていた建築家の建物が特に気を引いたのではなかった。後述のプロフィールで、同じ40年生まれだったこと、それと他の建築家が数々の実績を誇らしげに載せているのに、彼は”まだ代表作というのはありません.....”  うーん、そんなこと書いたら誰も依頼に来ないんじゃないの?正直なのか、商売っけがないのか面白い人だと感じた。西宮という近所(後でもっと近所にたくさん建築家がいた事を知る)だし、メールアドレスも書いてあるし、ちょっと参考までにお話聞いてみようか。
 この辺がEメールの気軽さである。すぐに、返事がきた。あの雑誌でメールを送ってきたのは、私が初めてだったらしい。そのときは、家は建てたいけどまだまだ無理でしょうね、といった前置きのある建築依頼メールとは程遠いものであった。しかし、いろいろ建築の話題だとか、デザインのこととか、メール雑談にしばらく花が咲いた時期があった。この段階では、単なるメールフレンド以上の付き合いではなかった。このやりとりの中で、庄司氏はグラフィックデザインもできるというか、もともとそっちの方の人だったことがわかり、さらに親近感がわく。(これは後になっていろいろわかったことだが、意外と建築家でもデザインのできない人が多い。)
 私が作品を発表しているDIGITAL IMAGE展にも足を運んでくれ、忌憚のない意見を伺うことができた。うーん、なかなか侮れない人だと思う。そんな中、バックグラウンドでは、いろいろな方面からご助言をいただき、土地さえ見つかれば一戸建ても絵空事ではないとの結論を得た。しかし、どうしても神戸市街に住みたいという条件が足を引っ張り、早々条件に合う土地など見つかる気配がなかった。
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 そんなある日、”設計依頼のメールだったらよかったのですが、たわ言メールになってしまいました。ごめんなさい、聞き流して下さい。”と言う末尾でくくられた1通のメールが届きました。それが、竹田氏でした。雑誌に掲載された作品を見てメールをいただけたのは、後にも先にもこの1通。しかし、これが仕事につながったわけですから100%の確率と喜ぶべきなのか。
 冗談はさておき、竹田氏のメールに早速お礼のメールを送りました。CGデザイナーでコンピュータに向かう仕事柄なのか、竹田氏からそのお礼のメールに翌日にも早速返事がきました。それにまた返事を送る。某TV番組の素人批評など、たわいのない話のやり取りをそんな調子で繰り返していました。
 しかし、電子メールの気軽さなのか、竹田氏の職業柄なのか、このときには思いも寄らない状況が後に待っていました。施主の方と出来るだけ多く話をしながら、お互いの考えを交わしてひとつの形にしていくのが、私としては設計者の職分と考えておりました。今までは、2〜3週に一度打合せをし、持ち帰って考え直す。それをまた打合せし、また考え直す。と言う繰り返しを重ねながら徐々に進めていくやり方に慣れてしまっていたのです。ところが、竹田氏と家を造りましょう!とスタートしてからは、これを昨今のIT革命というべきかかメールが2〜3日に一度は送られて来る。考え最中に次々送られてくるメールが山のようになり、目が回る思いになりました。改めて今までやり取りしたのメールを数えようとしましたが、半年の間に、双方合わせれば200通を軽く越えてしまいます。ラブレター以上の密接な関係です。こまめな私(?)も過去にはここまでは出来ませんでした。危ない危ない。おかげさまで、そんなやり取りにも何となく今は慣れてきました。
 竹田氏は同年代の施主さんとは言え、時代の流れを感じざるを得ません。CGと建築。内容こそは違いますが、お互い物作りに携わる職業をもち、それぞれのこだわりがそうしたリアルタイムなやり取りに輪を掛けたのかもしれません。しかし、竹田氏の攻勢はこれだけではなかったのです。